鰹節はどう作られる?水揚げから削り節になるまでの長い道のり

Close-up of tequila production machinery with raw agave fibers. 未分類
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スーパーの棚に並ぶ削り節の袋を手に取ったとき、中身がどうやってあの薄い花びらのような形になったのか、考えたことはあるでしょうか。鰹節は、魚を煮て干しただけの食品ではありません。水揚げから手元に届くまで、早くても数週間、長いものだと半年近い時間をかけて作られています。今日はその道のりを、順を追ってたどってみます。

鰹が水揚げされてから「なまり節」になるまで

鰹節づくりの出発点は、港に揚がったばかりの新鮮な鰹です。ここで鮮度が落ちていると、あとの工程をいくら丁寧にやっても味が締まりません。つまり最初の数時間が、完成品の土台を決めてしまうということです。

水揚げされた鰹は、まず頭を落として内臓を取り、三枚や四枚におろします。このとき骨や血合いの処理が雑だと、生臭さが残ったまま次の工程に進んでしまいます。おろした身を一度茹でる「煮熟」という作業を経ると、ここでようやく「なまり節」と呼ばれる状態になります。刺身用の鰹とは別物で、火を通した状態の中間素材と思ってもらえば分かりやすいと思います。

想像してみてください。朝方に水揚げされた鰹が、その日のうちにおろされ、大きな釜で何時間も煮られていく様子を。湯気が立ちこめる作業場で、職人は身の締まり具合を手で確かめながら、火から上げるタイミングを計っています。早すぎれば生っぽさが残り、遅すぎれば身が崩れてしまう。数分の差が仕上がりを左右する、意外と神経を使う工程です。

ただし、すべての鰹節がこの手順を踏むわけではありません。小型で作られる簡易的な削り節商品の場合、工程を一部省略したり、機械化で時間を大幅に短縮したりしているケースもあります。「なまり節」という言葉自体、地域や製法によって指す範囲が微妙に違うこともあるので、厳密な定義にこだわりすぎないほうが実情に近いかもしれません。

骨抜きと乾燥、荒節ができるまでの工程

なまり節になったあとは、骨を一本一本抜く作業が待っています。この地道な作業を経て、乾燥と燻煙を繰り返すと「荒節」と呼ばれる段階に到達します。ここまで来て、ようやく私たちが知っている鰹節らしい硬さと香りが生まれます。

骨抜きは機械である程度自動化されていますが、最後は人の目と手でチェックするところが多いようです。小骨が一本でも残っていると、削ったときに口当たりを損ねてしまうからです。骨を抜いたあとの身は、薪を使って燻す工程に入ります。この燻煙を何度も繰り返すことで、水分を飛ばしながら表面に燻製の香りをまとわせていきます。

燻煙は一度で終わりません。燻しては休ませ、また燻す。これを十回前後繰り返すこともあると言われています。たとえば、ある工房では早朝に火を入れ、一日のうちに数時間だけ燻煙し、残りの時間は休ませて水分を内側から表面に移動させる、という作業を一週間から十日ほど続けます。こうして徐々に水分を抜いていくことで、表面だけ乾いて中が生煮えのような状態を避けられるわけです。

ここで迷いやすいのが、「燻製=煙で味付けしている」という理解です。実際には香り付けだけでなく、乾燥と防カビの役割も大きく、燻煙の煙にはある程度の殺菌効果も期待されています。香りづけはあくまで副産物という見方もできて、単純に「スモークフレーバーをつけている」と捉えると工程の意味を見誤ってしまいます。

カビ付けという一手間、枯節が生まれる理由

荒節の状態でも鰹節として出荷されることはありますが、さらに手間をかけて「カビ付け」を行ったものが枯節と呼ばれます。カビの力を借りて余分な水分と脂を抜き、香りをまろやかにする。これが枯節が生まれる理由です。

仕組みはこうです。荒節の表面に特定の麹カビを植え付け、温度と湿度を管理した室(むろ)に数週間置きます。カビは荒節の内部に菌糸を伸ばしながら、脂肪分を分解し、余分な水分を吸収していきます。この作業を一回で終わらせず、カビを一度拭き取ってまた生やす、という工程を数回繰り返すものもあります。繰り返す回数が多いほど、水分が抜けて硬く締まり、香りも深くなっていくとされています。

室の中を想像してみると分かりやすいかもしれません。薄暗い部屋に棚が並び、そこに荒節がびっしりと並べられています。表面にうっすらと白や緑がかった菌糸が広がっていく様子は、慣れない人が見るとぎょっとするかもしれません。ですが、これは管理されたカビで、鰹節づくりには欠かせない工程です。温度や湿度がわずかにずれるだけでカビの生え方が変わってしまうため、ここは経験がものを言う部分だと思います。長年同じ室を使っている作り手ほど、勘どころを掴んでいる印象があります。

ここで注意したいのは、カビ付けの回数や期間によって「本枯節」と呼ばれるかどうかが変わってくる点です。何回カビ付けをすれば本枯節と呼べるか、という線引きは作り手や地域によって幅があります。一概に「これが正解」と言い切れない部分なので、商品を選ぶときは工程の説明をよく読むくらいがちょうどいいと思います。

荒節と枯節、何が違うのか

結論から言うと、荒節は香りが力強く出汁に厚みが出やすく、枯節は香りが上品でくせが少ない傾向があります。どちらが優れているというより、使い道が違うと考えたほうが実態に近いです。

荒節は燻煙までで仕上げているため、脂分や水分がまだ枯節より多く残っています。そのぶん出汁を取ったときに力強い風味が出やすく、そばつゆやラーメンのスープなど、はっきりした味を求める料理に向いているとよく言われます。一方の枯節は、カビ付けによって脂分と水分がさらに抜かれているため、雑味が少なく澄んだ出汁が取りやすいとされます。お吸い物や茶碗蒸しのような、繊細な味を活かしたい料理と相性がいいという意見が多いようです。

たとえば、家庭で出汁を引くときに荒節と枯節を両方使い比べてみると、違いがはっきり分かることがあります。同じ分量、同じ時間で引いても、荒節のほうが香りの主張が強く、枯節のほうが後味がすっきりしている。そんな印象を持つ人が多いようです。

ただし、この違いはあくまで一般的な傾向であって、削り方の厚さや保存状態、だしを引く時間によっても結果は大きく変わります。「荒節だから必ず濃い」「枯節だから必ず上品」と単純に割り切れるものではありません。ここは好みも絡むところなので、正解を探すより、両方試して自分の味覚に合うほうを選ぶくらいの気持ちでいいと思います。

削り節として手元に届くまで、保存と使い方

荒節や枯節は、そのままでは硬くて食べられません。鰹節削り器や機械で薄く削ることで、ようやく私たちが知っている「削り節」になります。ここまで来て、ようやく鰹節は料理に使える状態になるわけです。

削る工程にも理由があります。鰹節は繊維が非常に硬く詰まっているため、薄く削ることで表面積を増やし、お湯に触れたときに旨味成分が素早く溶け出すようにしているのです。厚く削ってしまうと、旨味が出るまでに時間がかかりすぎたり、逆に雑味まで出てしまったりします。削る厚さひとつで出汁の質が変わる、というのは案外知られていない事実かもしれません。

袋入りの削り節を買ったときのことを思い浮かべてみてください。封を開けた瞬間にふわっと香る、あの独特の匂い。あれは削られてから時間が経っていないほど強く感じられます。削り節は酸化が早く、風味が落ちやすい食品なので、開封後はできるだけ早く使い切るか、密閉容器に入れて冷蔵庫で保存するのが無難です。削りたての塊を買って、使う直前に自分で削るという昔ながらのスタイルを続けている家庭も、今でも一定数あるようです。

とはいえ、毎日削り器を使うのは現実的ではない、という人がほとんどだと思います。小分けパックの削り節を使い切りで消費するという現代的なスタイルも、決して間違いではありません。鰹節は作る工程に何週間もかけているのに、食卓では数秒で出汁を引かれて役目を終える。そのギャップを知っているだけで、味噌汁一杯の見え方が少し変わってくるのではないかと思います。

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